準備1号のあらすじ

笠井アイコン

2021年4月18日に情報解禁され、執筆者とスタッフを公募。
業務委託共通規約業務委託仕様書をもとに執筆・制作を依頼。
執筆者には着手金を支払いました。
2021年8月18日に準備1号が完成し、8月21日には刊行記念のオンライン勉強会を行いました。

小澤アイコン

編集者・ライターの方々を中心に購入をいただき、2021年5月23日には弁護士ドットコムニュースに取材記事が発表されました。
> 原稿料も契約書も制作過程も公開、ライターのトラブルなくしたい『作家の手帖』の挑戦
また、「S-Fマガジン2022年2月号」に、作家の手帖として「往復書簡:じぶんの「つづき」を書こう。(1)」という記事を寄稿しました。

【1.企画趣旨】笠井康平「原稿料400年の歴史――どうして作家は昔からいまいち儲からないのか?」

1988年生まれ。東京都在住。会社員。著書に『私的なものへの配慮No.3』(いぬのせなか座)。近著に「文化芸術の経済統計枠組みはいかにしてテキスト品質評価指標体系の開発計画に役立つのか」「文化と経済をめぐるブックリスト」「現代短歌のテキストマイニング――𠮷田恭大『光と私語』(いぬのせなか座)を題材に」。


はじめに

「原稿料」にはたくさんの意味がある。謝礼金、着手金、成果報酬、著作権使用料、年俸・月給、業務委託費、収益分配、製造原価、ユーザ行動の対価を指す。値付けに関わる要素も多い。メディアの収支構造、流通量、作者の人数・待遇、職域・業務量、読者の可処分所得・時間――。

世界のインターネット人口は、2020年に46億6千万人(前年比7.3%増、対全人口比59%)に達した。出版市場シェア世界最多のレレックスグループは、科学・医療・法律の専門メディアとデータサービスを手がける。原稿料をめぐる慣習も変わるだろう。次の50年には、100年以上続いた文字単価と発行部数の時代が終わり、時間単価と読了率が主流になる日も来るかもしれない。

その日に備えておさらいしよう。原稿料をめぐる歴史は、情報技術の発展とともにあった。ざっくり半世紀ずつ区切ると、1. 木版印刷以後、2. 書籍商以後、3. 貸本屋以後、4. 活版印刷以後、5. 普通教育以後、6. 物価高騰以後、7. インターネット普及以後の7区分で考えられる。

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【4.原稿料】うっかり「俳句とお金」

第二回全国俳誌面協会新人賞準賞。BFC1に「抱けぬ身体」原英にて本戦出場。第十回北斗賞佳作。 関西現代俳句協会青年部のHPに10句。


俳人たちの集い

俳人は黙々と俳句を詠んでいるように思われているかもしれない。実際は俳句をきっかけとしてよく集まり、よくしゃべる。俳句は純粋読者がほぼおらず、読めば詠むという文芸だ。句会も活発に行われる。句会での作品は無記名で平等に扱われ、参加者で選評を言い合い、ゲームと会議の中間のような雰囲気で行われる。有名な俳人でも俳句初心者でも無記名なので関係ない。最後に票の入った句の作者が明かされる。指導を任されている、あるいは依頼されている立場の人は作品に対してアドバイスを行う。またはそのような立場の人がいない句会も多い。

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【6.契約・交渉】ひらりさ「原稿料をとりっぱぐれたくない私のセブンルール」

1989年生まれ、東京出身。ライター・編集者。ユニット「劇団雌猫」メンバーとして同人誌「悪友」シリーズを、また個人として同人誌「女と女」を刊行している。


出版社は倒産する

兼業ライターとして初めての原稿料は、3万3,750円だった。

ある冬のこと、ウェブメディアで働いているときに仲良くなった著者さんから、紹介案件が舞い込んだ。その雑誌が初めて組むボーイズラブ特集で、作家インタビューの一つを取材・構成して欲しいという。ライターとしての実績がほとんどなかった私にとっては、とても嬉しい依頼だった。

取材はつつがなく終わった。担当編集の振る舞いや赤入れもそつなく、最後まで気持ちよく原稿に取り組めた。作家さんからもお礼の言葉が届き、雑誌も無事発売。同特集を取り上げたネット記事もたくさん出た。

発売翌日に、担当編集のAさんからお礼メールが来た。

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【7.選考】伏見瞬「「ズレ」が「ズレ」でなくなる時

文筆の悪魔


インディペンデント批評誌『LOCUST』のコンセプト

「LOCUST(ロカスト)」という雑誌を十数名の友人とともに自費出版していて、編集長を担当している自分でもとても素敵な雑誌だと思うのだが、最近の状態に悩んでいる。やる気が出ないというと言い過ぎかもしれないが、どうにも、製作に力のこもらない感じがするのだ。リーダーがこれでは良くない。困っている。

「LOCUST」は旅行と批評をかけあわせた雑誌である。毎回、特定の場所に集団で旅行に行き、互いの考えや感じ方を交換した上で、批評文やエッセイを執筆し、互いに編集する。2018年からこれまでに4冊を刊行し、この秋には新刊を出す予定だ。これまで、順に「千葉内房」「西東京」「岐阜(美濃地域)」「長崎」と旅行してきた。観光地のイメージがついていない場所に行く傾向にある。

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【8.執筆】大滝瓶太「WEBライティングの熱力学的な死――──そのテクストの「意思」の所在」

86年生まれ。作家。「SFマガジン」(早川書房)や「小説すばる」(集英社)で小説・書評などを執筆。


少年たちは流行のダイエット法を売り込む場合と同じく、自分たちのターゲットが欲しがりそうだという理由だけで政治に関する嘘を書き込んだ。
──P. W. シンガー、エマーソン.T.ブルッキング著、小林由香利訳『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』


自己組織化する文章表現

いまもってこうして文章を綴りながらも、じぶんの意思というのはわからない。

もちろん何かを考え、大なり小なりの伝達を試みようとはしていて、おそらくじぶん以外に書けるものではないけれど書いたじぶんですら一字一句辿りなおすことなんてできないこの文章は、果たしてどこからやってきたのか。文章は、ぼくの手で書かれながらもぼくではない意思によって構造化されていく。ぼくの意思ではなく、ライティングというシステムによって。

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【15.流通・販売】関口竜平「書くということ——ただ「置く」だけではない、<メディア>のひとりとしての書店」

本屋lighthouse店主。1993年2月26日生まれ。20歳のころから卵と乳がアレルギーになりました。


はじめに

本の帯に載っている書店員のコメント。その書き手に「原稿料」が支払われることはほとんどない。

このことを知って驚いたあなたはその感覚を大事にしてほしい。驚かなかったあなた、つまり、おそらく書店か出版社で働くあなたに向けて、いまから「書店員」として「原稿」を書いていく(もちろん一読者のあなたにも)。

出版業界以外の人のために、大まかに説明したい。出版社は刊行前にプルーフやゲラ(=書店員向けサンプル)を書店員に読んでもらい、感想や推薦の言葉を募ることがある。本の帯に載っている書店員のコメントは、主にそこから抜き出したものだ。このプルーフ/ゲラは挙手制でもらうこともあれば、出版社から送られてくることもある。それを書店員は読み、コメントを返し、場合によってはそれが採用されている。

つまり「プルーフ読み→コメント返し(※以下「プルーフコメント」と表記)」は基本的には書店員の能動的な行為であるが、だからといってそれが無報酬を正当化することにはならない。

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【16.パブリシティ】小澤みゆき「PRのための「周辺」原稿

1988年生まれ。東京都在住。会社員。編著に『かわいいウルフ』(亜紀書房)。近著に「ウルフ・チャット」「文芸という海――メジャーとインディペンデントの波間で」(「群像」掲載)、「若さの予感」(「しししし」掲載)。


はじめに

本の企画やPRも立派なモノづくりのプロセス。部数の獲得、制作費の回収、原稿料や印刷費の支払い――創作活動を持続可能なものにするためには、読者の認知獲得やメディアへの売り込みといった、本の「周辺」に位置する数多くの原稿が必要になる。


企画〜制作初期


企画書

本を作りたいと思ったらまずアイデアをまとめよう。フォーマットはA4で1、2ページ程度。詳しい記載内容は注釈の(1)を参照。

  • タイトル: 本のタイトルがそのままコピーになるようにしたい(2)
  • 判型・ページ数:本の大きさ・厚さによって通販の送料や書店の注文数が変わる。
  • 部数:期待売上高から、同人誌即売会の出店料やレンタルサーバー代など、販促予算を割り出す。
  • 刊行時期:同人誌即売会などのイベントに合わせると読者の認知をより得やすい。
  • 想定読者:ペルソナがあるとPRのコンセプトが組み立てやすい。
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【18.財務・会計】poroLogue「原稿料はどう決める?――Webメディアの副編集長が作り上げた「事業と財務」の対話を促す経理の仕組み」

早稲田大学文化構想学部卒業後、日立グループにて全社の業務プロセス改善プロジェクトに従事。退社後、株式会社Moguraにてメディア事業、VTuber領域統括等を担当しつつ、経理財務領域の運営も担当した。


「作家の手帖」発足から1週間。執筆者募集のかたわら、事業と財務の両面から原稿料について語れる方を探していたところ、株式会社Moguraの永井良友さん(現・ MoguLive副編集長)から「協力できるかもしれません」とお声がけいただき、早速編集部は通話取材を行った。これはその速記を要約し、再構成した編集記事である。当日の言葉づかいの復元ではない。業界紙の取材記事っぽいハードボイルドな感じに仕上げてみたかったからである。

取材:
2021年4月23日(金) 19:00-20:00@Google Meet
出席:永井、笠井(聴き手)、小澤(書記)


Webメディアの原稿料・利益目標の決め方は?

笠井 Webメディア運営に当たって、原稿料はどう設定しているか。1記事あたりの制作費や目安作業時間を算出している?
永井 1記事ごと全てを算出しているわけではない。「ニュース記事」や「インタビュー記事」など、カテゴリ毎に大まかに決めるのがオーソドックスだろう。

笠井 事業収支よりも細かい単位、たとえば記事単位の利益目標を考えることはある?
永井 相当なPVボリュームのある記事を制作する場合ならありうるかもしれない。WebメディアにはGoogle AdSenseなどの広告収益のほか、クライアントから受注する記事広告など複数の収益源がある。それらを複合的に考慮し利益目標を決める。必ずしも記事単位の利益目標を設定しているわけではない。事業部門は記事PVや掲載価値などを重視する。それらの指標と収支の関係を理論づけできれば、記事別の利益目標を作れはするとは思うが。

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【第1回勉強会】夏休み特番!真夏のOne Last Summer 8月祭 in 2021 ~作家と原稿料をとことん語るぞスペシャル!!~

「作家の手帖」準備1号の刊行記念イベント案内
「作家の手帖」準備1号の刊行記念イベント案内

概要

全3時間半の長丁場で、先行文献の紹介、昨今の諸問題の討議、準備号の感想戦を一挙に行うオンライン配信番組。ショートスピーチ参加チケットをお求めの購入者の方には、3分間の発表を行っていただきました。

プログラム

第1部:先輩的文献の読書会

この企画のきっかけになった2冊の本――『原稿料の研究』(1978)と『作家の原稿料』(2015)をはじめとした参考文献を紹介しました。原稿料の歴史、コンテンツビジネス各界の契約書ひな型、文化と経済について学びたい方のためのブックリストなどなど。後半にはスタッフ紹介も。


第2部:トーク番組「読み書きとお金にまつわるエトセトラ」

読み書きに関わる新しい働き方をめぐって、3人の方にお話しいただきました。創業のいろは、コミュニティ作り、ライスワーク/ワイフワークのバランス、クリエイターエコノミーの未来など、多岐にわたるトピックを扱いました。

  • コーナー1:「『個の対話』を大切にする、me and you社の創業とこれから」
  • ショートスピーチ:高橋文樹さん
  • コーナー2:25分「持続可能で・透明な『出版』の潜在性」
    • ゲスト:熱海凌さん
    • 聞き手:笠井


第3部:「作家の手帖」準備号の感想会

準備1号に執筆された6名の方に、どのように執筆を進めたか、「原稿料」と聞いて思い浮かぶことなど、記事校了後のインタビューを行いました。また、第2部・第3部の幕間に、5人の方にお話しいただきました。出版企画、兼業で書くこと、現代美術界のお金と契約、ライティングの哲学、サラリーマン巡回問題など幅広いテーマが語られました。

  • ゲスト:ひらりささん、伏見瞬さん、poroLogueさん、関口竜平さん、大滝瓶太さん、うっかりさん
  • ショートスピーチ:樋口芽ぐむさん、棒さん、seshiappleさん、大滝瓶太さん


著作権表示 / Copyright Notice

本番組では、下記のサイトで公開されている著作物を利用しました。
We will use copyrighted materials published on the sites shown below on this program.

音楽
効果音
【動画アーカイヴは、「作家の手帖」チケットを購入することで読むことができます】

スタッフ紹介

  • 執筆者(8名):笠井康平、うっかり、ひらりさ、伏見瞬、大滝瓶太、関口竜平、小澤みゆき、poroLogue
  • 編集者(3名):笠井康平、小澤みゆき、Raise
  • 制作事務(2名):笠井康平、小澤みゆき
  • デザイン(1名):月城美穂
  • 校閲・校正(1名):北出栞
  • 印刷オペレーション(技術サポート)(2名):小澤みゆき、paina
  • 会計(2名):しお、木田愛希
  • 監査役(1名):poroLogue
  • 勉強会の配信実務(1名):seshiapple
  • 勉強会の登壇者(2名~):熱海凌、竹中万季・野村由芽(株式会社me and you)
  • 勉強会のショートスピーチ(7名まで):高橋文樹、樋口芽ぐむ、棒、seshiapple、大滝瓶太
  • Special Thanks
    • 資料提供(2名):長瀬海、野崎タラ
    • 3Dモデリング(1名):棒
    • ほかGitHub Contributorsのみなさま