2021年に制作した「作家の手帖 準備1号」のコンテンツを紹介します。
準備1号のあらすじ
編集者・ライターの方々を中心に購入をいただき、2021年5月23日には弁護士ドットコムニュースに取材記事が発表されました。
> 原稿料も契約書も制作過程も公開、ライターのトラブルなくしたい『作家の手帖』の挑戦
また、「S-Fマガジン2022年2月号」に、作家の手帖として「往復書簡:じぶんの「つづき」を書こう。(1)」という記事を寄稿しました。
準備1号のもくじ
8記事の冒頭を無料で読めます。プロフィールは2021年8月当時のものです。
全文を読みたい方は「作家の手帖」チケットをお買い求めください。
【1.企画趣旨】笠井康平「原稿料400年の歴史――どうして作家は昔からいまいち儲からないのか?」
1988年生まれ。東京都在住。会社員。著書に『私的なものへの配慮No.3』(いぬのせなか座)。近著に「文化芸術の経済統計枠組みはいかにしてテキスト品質評価指標体系の開発計画に役立つのか」「文化と経済をめぐるブックリスト」「現代短歌のテキストマイニング――𠮷田恭大『光と私語』(いぬのせなか座)を題材に」。
「原稿料」にはたくさんの意味がある。謝礼金、着手金、成果報酬、著作権使用料、年俸・月給、業務委託費、収益分配、製造原価、ユーザ行動の対価を指す。値付けに関わる要素も多い。メディアの収支構造、流通量、作者の人数・待遇、職域・業務量、読者の可処分所得・時間――。
世界のインターネット人口は、2020年に46億6千万人(前年比7.3%増、対全人口比59%)に達した。出版市場シェア世界最多のレレックスグループは、科学・医療・法律の専門メディアとデータサービスを手がける。原稿料をめぐる慣習も変わるだろう。次の50年には、100年以上続いた文字単価と発行部数の時代が終わり、時間単価と読了率が主流になる日も来るかもしれない。
その日に備えておさらいしよう。原稿料をめぐる歴史は、情報技術の発展とともにあった。ざっくり半世紀ずつ区切ると、1. 木版印刷以後、2. 書籍商以後、3. 貸本屋以後、4. 活版印刷以後、5. 普通教育以後、6. 物価高騰以後、7. インターネット普及以後の7区分で考えられる。
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【4.原稿料】うっかり「俳句とお金」
第二回全国俳誌面協会新人賞準賞。BFC1に「抱けぬ身体」原英にて本戦出場。第十回北斗賞佳作。 関西現代俳句協会青年部のHPに10句。
俳人は黙々と俳句を詠んでいるように思われているかもしれない。実際は俳句をきっかけとしてよく集まり、よくしゃべる。俳句は純粋読者がほぼおらず、読めば詠むという文芸だ。句会も活発に行われる。句会での作品は無記名で平等に扱われ、参加者で選評を言い合い、ゲームと会議の中間のような雰囲気で行われる。有名な俳人でも俳句初心者でも無記名なので関係ない。最後に票の入った句の作者が明かされる。指導を任されている、あるいは依頼されている立場の人は作品に対してアドバイスを行う。またはそのような立場の人がいない句会も多い。
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【6.契約・交渉】ひらりさ「原稿料をとりっぱぐれたくない私のセブンルール」
1989年生まれ、東京出身。ライター・編集者。ユニット「劇団雌猫」メンバーとして同人誌「悪友」シリーズを、また個人として同人誌「女と女」を刊行している。
兼業ライターとして初めての原稿料は、3万3,750円だった。
ある冬のこと、ウェブメディアで働いているときに仲良くなった著者さんから、紹介案件が舞い込んだ。その雑誌が初めて組むボーイズラブ特集で、作家インタビューの一つを取材・構成して欲しいという。ライターとしての実績がほとんどなかった私にとっては、とても嬉しい依頼だった。
取材はつつがなく終わった。担当編集の振る舞いや赤入れもそつなく、最後まで気持ちよく原稿に取り組めた。作家さんからもお礼の言葉が届き、雑誌も無事発売。同特集を取り上げたネット記事もたくさん出た。
発売翌日に、担当編集のAさんからお礼メールが来た。
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【7.選考】伏見瞬「「ズレ」が「ズレ」でなくなる時
文筆の悪魔
「LOCUST(ロカスト)」という雑誌を十数名の友人とともに自費出版していて、編集長を担当している自分でもとても素敵な雑誌だと思うのだが、最近の状態に悩んでいる。やる気が出ないというと言い過ぎかもしれないが、どうにも、製作に力のこもらない感じがするのだ。リーダーがこれでは良くない。困っている。
「LOCUST」は旅行と批評をかけあわせた雑誌である。毎回、特定の場所に集団で旅行に行き、互いの考えや感じ方を交換した上で、批評文やエッセイを執筆し、互いに編集する。2018年からこれまでに4冊を刊行し、この秋には新刊を出す予定だ。これまで、順に「千葉内房」「西東京」「岐阜(美濃地域)」「長崎」と旅行してきた。観光地のイメージがついていない場所に行く傾向にある。
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【8.執筆】大滝瓶太「WEBライティングの熱力学的な死――──そのテクストの「意思」の所在」
86年生まれ。作家。「SFマガジン」(早川書房)や「小説すばる」(集英社)で小説・書評などを執筆。
いまもってこうして文章を綴りながらも、じぶんの意思というのはわからない。
もちろん何かを考え、大なり小なりの伝達を試みようとはしていて、おそらくじぶん以外に書けるものではないけれど書いたじぶんですら一字一句辿りなおすことなんてできないこの文章は、果たしてどこからやってきたのか。文章は、ぼくの手で書かれながらもぼくではない意思によって構造化されていく。ぼくの意思ではなく、ライティングというシステムによって。
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【15.流通・販売】関口竜平「書くということ——ただ「置く」だけではない、<メディア>のひとりとしての書店」
本屋lighthouse店主。1993年2月26日生まれ。20歳のころから卵と乳がアレルギーになりました。
本の帯に載っている書店員のコメント。その書き手に「原稿料」が支払われることはほとんどない。
このことを知って驚いたあなたはその感覚を大事にしてほしい。驚かなかったあなた、つまり、おそらく書店か出版社で働くあなたに向けて、いまから「書店員」として「原稿」を書いていく(もちろん一読者のあなたにも)。
出版業界以外の人のために、大まかに説明したい。出版社は刊行前にプルーフやゲラ(=書店員向けサンプル)を書店員に読んでもらい、感想や推薦の言葉を募ることがある。本の帯に載っている書店員のコメントは、主にそこから抜き出したものだ。このプルーフ/ゲラは挙手制でもらうこともあれば、出版社から送られてくることもある。それを書店員は読み、コメントを返し、場合によってはそれが採用されている。
つまり「プルーフ読み→コメント返し(※以下「プルーフコメント」と表記)」は基本的には書店員の能動的な行為であるが、だからといってそれが無報酬を正当化することにはならない。
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【16.パブリシティ】小澤みゆき「PRのための「周辺」原稿
1988年生まれ。東京都在住。会社員。編著に『かわいいウルフ』(亜紀書房)。近著に「ウルフ・チャット」「文芸という海――メジャーとインディペンデントの波間で」(「群像」掲載)、「若さの予感」(「しししし」掲載)。
本の企画やPRも立派なモノづくりのプロセス。部数の獲得、制作費の回収、原稿料や印刷費の支払い――創作活動を持続可能なものにするためには、読者の認知獲得やメディアへの売り込みといった、本の「周辺」に位置する数多くの原稿が必要になる。
【18.財務・会計】poroLogue「原稿料はどう決める?――Webメディアの副編集長が作り上げた「事業と財務」の対話を促す経理の仕組み」
早稲田大学文化構想学部卒業後、日立グループにて全社の業務プロセス改善プロジェクトに従事。退社後、株式会社Moguraにてメディア事業、VTuber領域統括等を担当しつつ、経理財務領域の運営も担当した。
笠井 Webメディア運営に当たって、原稿料はどう設定しているか。1記事あたりの制作費や目安作業時間を算出している?
永井 1記事ごと全てを算出しているわけではない。「ニュース記事」や「インタビュー記事」など、カテゴリ毎に大まかに決めるのがオーソドックスだろう。
笠井 事業収支よりも細かい単位、たとえば記事単位の利益目標を考えることはある?
永井 相当なPVボリュームのある記事を制作する場合ならありうるかもしれない。WebメディアにはGoogle AdSenseなどの広告収益のほか、クライアントから受注する記事広告など複数の収益源がある。それらを複合的に考慮し利益目標を決める。必ずしも記事単位の利益目標を設定しているわけではない。事業部門は記事PVや掲載価値などを重視する。それらの指標と収支の関係を理論づけできれば、記事別の利益目標を作れはするとは思うが。
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【第1回勉強会】夏休み特番!真夏のOne Last Summer 8月祭 in 2021 ~作家と原稿料をとことん語るぞスペシャル!!~
全3時間半の長丁場で、先行文献の紹介、昨今の諸問題の討議、準備号の感想戦を一挙に行うオンライン配信番組。ショートスピーチ参加チケットをお求めの購入者の方には、3分間の発表を行っていただきました。
この企画のきっかけになった2冊の本――『原稿料の研究』(1978)と『作家の原稿料』(2015)をはじめとした参考文献を紹介しました。原稿料の歴史、コンテンツビジネス各界の契約書ひな型、文化と経済について学びたい方のためのブックリストなどなど。後半にはスタッフ紹介も。
読み書きに関わる新しい働き方をめぐって、3人の方にお話しいただきました。創業のいろは、コミュニティ作り、ライスワーク/ワイフワークのバランス、クリエイターエコノミーの未来など、多岐にわたるトピックを扱いました。
準備1号に執筆された6名の方に、どのように執筆を進めたか、「原稿料」と聞いて思い浮かぶことなど、記事校了後のインタビューを行いました。また、第2部・第3部の幕間に、5人の方にお話しいただきました。出版企画、兼業で書くこと、現代美術界のお金と契約、ライティングの哲学、サラリーマン巡回問題など幅広いテーマが語られました。
本番組では、下記のサイトで公開されている著作物を利用しました。
We will use copyrighted materials published on the sites shown below on this program.
スタッフ紹介